• TOP
  • 特別対談 @脳科学者・中野信子氏 X 恋愛結婚学研究所長・新上幸二

特別対談 @脳科学者・中野信子氏 X 恋愛結婚学研究所長・新上幸二

結局、恋愛は科学で説明できるもの?(前編)




愛カツ電話相談には、恋愛の悩みを抱えている方から毎日多くの電話をいただきます。相談員の先生には占い師の方もいらっしゃれば、探偵の方も。もちろん、心理カウンセラーの方も多くいらっしゃいます。
そして、今回は脳科学者・中野信子氏に特別にご登場いただくこととなりました。

12月17日(月)の19時から1名のお客様と実際に電話で恋愛相談をしていただきます。

それに先立ち、愛カツ電話相談のプロデューサーであり、恋愛結婚学研究所・所長の新上幸二氏と中野信子氏が、対談を行った模様をお送りします。

人はなぜ片思いに悩み続けるの? それは脳に秘密があった



新上幸二氏(以下、新上):中野さん、今日は宜しくお願いいたします。17日に愛カツ電話相談にご登場いただけるということで、本当にありがとうございます。
まず、当社のお客様ではどういう悩みを抱えている方が多いかと言うと、圧倒的に「片思い」です。悩んでいらっしゃる方は、一日に何度もおかけいただくこともあります。

中野信子氏(以下、中野):『いのちの電話』や産業カウンセリングでやっている『こころの耳』でも、電話をかけること自体で「癒やし」になっていると聞きます。

新上:先日中野さんの『不倫』を読ませていただいて、興味深い記述がありました。人の愛着スタイルの話があったと思うのですが、「安定型」「回避型」「不安型」と3つのスタイルに分かれていると。
その中で当社にお電話をいただくお客様には「不安型」のスタイルをお持ちの方が多いのではないかと。

中野:不安型の人が多いでしょうね。回避型の人はそもそも回避をするので、電話は好きではないと思います。ちょっと古いデータにはなりますが、安定型:不安型:回避型=6:2:2くらいです。2割と言いましたが、実際はもっと多いようにも感じますね。

新上:そもそも、どうして人は片思いをするのでしょうか? 脳科学的に説明できるのでしょうか?

中野:それは片思いをするのが楽しい、片思いをするとドーパミンが多く分泌されるからです。たとえば、焼き鳥やうなぎなど、いい匂いがする食べ物があるとしますよね。
それは、匂いをかいでいるときが一番楽しいのです。「これから何かが起こるかもしれない」という期待があり、予測ができるときにドーパミンが多く分泌されます。

ところが、実際に食べているときにはそんなに楽しくはない。なぜならば、「期待している」ときのほうがドーパミンが大量に分泌されるからです。

つまり「片思い」をしている限り、ドーパミンは分泌され続け、減らないのです。

新上:ずっと減らないから……

中野:片思いは楽しいのです(笑)。アイドルの売り方も基本的には同じですよね。絶対に実らない片思いをファンに提供していると言えます。

新上:すると、中野さんが片思いの相談を受ける場合には、「ずっと片思いをしていると楽しいよ」と相談者にお伝えするのでしょうか(笑)?

中野:いやいや(苦笑)、たとえば「片思いをしているときほど、自分を磨きましょう」と言いますね。前向きな状況であるからこそ、目標を持って自分を成長させるといい、という語りかけをしたいと思います。

新上:中野さんにそう仰っていただけると、相談者の方はとても励まされると思います。

「彼と目が合った。私のことが好きに違いない」思い込みにとらわれる理由は脳科学で説明できる?




新上:さて、別の相談例として「気になっている彼と目が合いました。彼はもう私のことを好きなんでしょうか?」という…… 客観的に見ると思い込みとしか思えないケースがあります。
この思い込みが発生するメカニズム、脳科学的にはどうなのでしょうか?

中野:客観的な見方を自分に対して可能にする脳の領域は、生物の進化過程の中で、後になって生じてきた領域なのです。
系統発生的にも後ですし、個体発生的にも成熟するのに時間がかかります。少なくとも10代の方では客観的な見方はできなくて当然です。30代になって、ようやく出来上がる人がいるかいないか、という感じです。

新上:若いうちは客観的なものの見方ができないものなのですね。自分を振り返っても確かに納得です。

中野:そもそもできないですし、領域が完成しても、ドーパミンは大脳辺縁系でも分泌されている場合、辺縁系の機能のほうが優先されて、客観的に自分を見る領域のはたらきは麻痺してしまう。だから、そもそも人間にとって客観的なものの見方をする、のは期待しにくいことなのです。

たとえば、他人が「ちょっとそれ、おかしいよ」「絶対彼はあなたのことをなんとも思っていないよ」と言ったとしても、聞く側は「否定された」と思うだけで、助言が受け入れられることはほとんど無いと思います。

新上:客観的なものの見方を支える領域、の発育は先天的に決まっているのでしょうか? それとも環境環境によって成長が決まるのでしょうか?

中野:どちらかと言うと、やや環境要因が大きいと私は考えます。

新上:恋愛相談のカウンセリング現場にいると「相手に求める条件」を毎回聞きます。男女ともに相手に求める条件を聞くと、こう……客観的には実現しそうにない条件(年収●千万円で、優しい人で、スポーツマンで、というような)を言う人もいます。明らかに客観的なものの見方ができていないと感じますが、どうでしょうか?

中野:片思いのところで申し上げた通り、客観的に考える領域は働いていないのです。もちろん、完全に機能停止しているわけではありませんから、計算自体はしています。でも、それはあたかも「宝くじを買えば(自分は)当たるかも」という認知の歪みと一緒ですね。実際には一等賞は、東京で一人か二人しか当たらないと思いますが、その割合を具体的にイメージできますか?
ちょっと難しいですよね。

新上:では、そういう相談者の方にどうやって現実を見てもらえばいいのでしょう? どのようにアドバイスをしますか? これはいつも悩むところで、客観的な判断ができない状況の人に、事実を伝えて理解してもらうのは本当に難しい。

中野:そもそも現実を見たり、自分の置かれている状況を冷静に考えたりできていれば悩むことはないので……。せいぜい理想を叶えるのはとても難しいですよ、と言うに留めますね。

思い込むのは楽しいこと。ただし、不安になってしまい関係を壊す人も




新上:「この人しか自分にはいない」とか「この人を離してしまうと他には誰もいない」という思い込みも、とても多いです。客観的にみると、そんなことは決してないと思いますが。

中野:これも認知の歪み、ですね。ただ、そういう思い込みがある方が人として正常だと思います。安定型・不安型の人はこういう愛着をきちんと作れる人。 場所や人に対して、しっかり愛着を作ることができるからこそ、こういったことが起こるのです。たとえば、人はどこにでも住めますが、それぞれ気に入った土地や場所があるはずです。

新上:あ、確かに私も中央線沿線に20年くらい住んでいます。

中野:そうそう。人でも場所でも、長く居続ければ居続けるほどそこに愛着が湧くというのは、「長くいることができた場所」というのは「それだけ安全だ」ということ。
それは、その場所にいた時間の長さが保証してくれるのです。無意識のうちにそこにいようとする機構が働きます。哺乳類なら、皆持っている性質ですね。

人についても一緒で「この人と一緒にいると危害を加えられなかった」とか「この人と一緒にいると安定した家族を築ける」とか。
他の相手を探しに出かけるよりも、その人と一緒にいたほうが、お互いにとって利益が大きい。そうすると、「この人しかいない!」という愛着が形成されます。
客観的に見ると、そうとは言い切れないのですが……。

新上:言い切れないどころか、個人的にはそんなことは絶対に無いと思いますね。世の中にこんなに多くの男女がいるのだから。統計的に考えると、今の相手より合う相手は必ずいると考えます。

中野:実際のところ、他の相手でも安全なのかもしれませんね。でも、その人しかいないという、いわば「結合」が作られてしまう。いっぽうで、そういったものを作らない人がいわゆる「回避型」ですね。
思い込みをするほうが正常ですし、楽しいことですので、私は思い込みを否定するつもりはありません。しかし、楽しいだけならまだいいのですが、不安型の人は楽しいだけではなく、困惑をしてしまう。

新上:不安型の人はどういった状況に困惑するのでしょうか?

中野:良好な関係であるにもかかわらず、ちょっとした不安要因を拡大解釈して、「この人が自分から離れてしまうのではないか」という考えにとらわれてしまう。

それだけならまだしも、相手にいろいろと制限を加えたり、不必要な調査を始めたり、そんなことすらしてしまうこともあります。

新上:つまり、相手を束縛してしまうということですね。束縛も男女ともに悩みとしてよく聞くテーマです。ちょっと前に起こったカレログ事件のように、GPSで相手を管理するなど、度を過ぎたケースも聞きます。

中野:そう、束縛ですね。せっかくお互い、良い関係になったのに、不安を解消するために相手にしがみついてしまい、関係を自ら壊してしまうのです。そういう悩みを抱えている方もご相談者のなかにはいらっしゃるかもしれませんね。

***

前編では、恋愛の悩みでありがちな「片思い」「思い込み」について、中野さんに脳科学の視点からお話していただきました。後編では、恋愛のスタイルは遺伝するのか? という「恋愛と遺伝」についてお話いただきます。そして中野さんはどういった恋愛相談をするのか? とみなさんが気になるポイントも一挙公開します。